宴の裏で悪魔が微笑んでいた――。
元社長、岩崎琢弥氏がこの有名なセリフを吐き、トップの座を退いて14年。今、バブル期を上回る空前の活況に沸く証券業界にあって、損失補填や暴力団との取引、そして総会屋への利益供与への反省から「誠心誠意の」という意味の「コーディアル」という言葉を冠し、再出発したはずの日興コーディアルグループ(以下日興)に元気がない。05年9月期中間決算の経常利益をみても、日興は556億円。首位・野村証券の3分の1、2位・大和証券の3分の2の水準に甘んじている。なぜ、日興だけが他の証券大手のように力強く浮上できないのだろうか。
実は、いま筆者の手元には日興の膨大な社内資料がある。段ボール1箱分近いその資料には、暴力団との関係や損失補填事件の裏側について社内調査したメモなど、日興の封印してきた過去が克明に記されている。その極秘資料をもとに社内外の関係者に取材した結果、こうしたスキャンダルへの現経営陣の関与、さらには05年3月期決算への疑問などが浮上してきた。いまなお日興を呪縛し続けるタブーを、これから明らかにする。
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系列企業によるゴルフ会員権預り証の購入、巨額の融資、東京急行電鉄株の買い集めの受注、絵画の仮装売買、そして債務不存在確認訴訟……。
1990年春に「証券スキャンダル」が発覚して以来、日興は折に触れて、指定広域暴力団の稲川会との取引の存在を糾弾されてきた。日興はそのたびに、金融当局やマスコミに対し、継ぎ接ぎだらけの釈明を繰り返してきた。そんな日興が、これだけはやっていないと徹底的に疑惑を否定したのが、暴力団への「利回り保証」に基づく「一任運用」の存在だった。だが、私の手元にある社内資料は、それさえ虚偽だったことを示している。
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